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いては、異論もあろう。しかし、自治体が市民活動団体のネットワーク形成のために場を提供し、そのための資金を提供することには、意味がある。それをどのように活用し、活動にプラスにしていくのかは、市民活動団体の創意工夫にかかっているといってもよい。
(d) 資金援助
資金の獲得は、市民活動を行っていく上でもっとも重要な問題である。多くの市民活動団体は、参加者の「持ち出し」で活動を行っており、予算規模も小さいものが多い。こうした市民活動団体が、公益性・公共性の高い活動を行っている場合に、これに地方自治体が資金援助を行うことが望ましい。
しかし、実際には、地方公共団体が市民活動団体に資金援助を行える例はそれほど多くない。地方自治体が直接市民活動に資金援助を行うことは極めて少なく、町内会自治会や住民協議会などのコミュニティ組織を経由する場合や外郭団体を経由する場合が多い。また、第3章で詳しくみるように、自治体が設立した基金による援助も一般化しつつある、自治体が直接資金援助を行う場合、援助した資金についての決算報告などを行わなくてはならないことなどから考えると、こうした方法もひとつであろう。
ただし、市民活動が自発性・自立性を活かした活動を展開していくためには、活動資金を地方自治体のみに依存することは得策ではない。いわゆる「ひもつき」といわれる状態の中で、活動内容に行政が介入したり、資金援助が活動の足かせになってしまう可能性もあるからである。そういった意味では、もう1つの方法として、市民活動が提供する公共サービスに対して、地方自治体が対価を支払う「委託」も考えられる。
川崎市では、市内の福祉関連の市民活動団体が結成した「市民参加型福祉協議会」に対して、配食サービスを委託しており、それに対する対価を支払っている。いわゆる市民事業が行われているわけであるが、活動の基盤を安定させるためにも、また、活動の継続性と市民活動の社会的認知の観点からも意味のあることである。市民活動が自治体の委託を受けること自体で、市民活動が新しい展開を見せてきていることへの理解も広がるであろう。
もちろん、問題がないわけではない。同じように配食サービスを展開する小規模な市民活動団体からは、扱いの差に対する不満も散見され、また、市民活動を行政の下請け機関に倭小化するものであるという批判もあるだろう。しかし、安易な行政への資金依存ではなく、また、あくまで対等なパートナーシップの下で市民活動が展開されていくためには、こうした関係の構築も十分考えられてよかろう。

 

 

 

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